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すずかけ 令和3年12月号 素顔拝見(第288回) 令和3年度兵庫県文化賞受賞者 兵庫県立大学特任教授・播磨学研究所名誉所長 中元 孝迪(なかもとたかみち)さん

播磨学を研究 成果発信し出版

 人口減少、東京一極集中が進む中、地域の活力を呼び戻すツールとして近年、注目されている「地域学」。中元さんは、中核都市・姫路市を中心とした播磨の地域学研究の第一人者だ。神戸新聞社の論説委員だった1988年に播磨学研究会(93年から播磨学研究所)を設立。播磨の歴史文化を調査研究した成果や情報を県内外に発信、全国の地域学グループとも連携を深めてきた。研究・執筆意欲は今も旺盛で4月には、白亜の姫路城を築いた池田輝政の評伝を出版した。

 東京教育大学文学部史学科日本史学専攻を卒業後、神戸新聞社に入社。「高校時代後半から歴史に興味を持ち始めて進学。新聞社では動きがある現場を報道したかったのです」。社会部記者、論説委員長、常任監査役など歴任。その後、姫路獨協大学副学長に就任。

 「地域学は、市民自らが自分たちの住む地域の歴史や文化、産業、経済などを再認識し、地域に新しい活力を生み出そうとする学問であり、運動である」との信念を持つ。播磨については「日本の政治を動かした姫路城があり、どの時代でも新しい歴史的段階を創造する極めて有力な動きが播磨で真っ先に展開されてきたことなどが魅力で研究を始めました。播磨の『地域の力』が日本史を変えたといえます」と話す。活動は活発だ。播磨学研究会設立以降、毎年、各地から招いた講師による「播磨学特別講座」を開催。終了後には、原則として講義録を一冊にまとめて出版。これまでに開いた「講座」などは300回以上で、受講者は9万人にも。2000年には、同研究所などが主催し姫路市で「第1回全国地域学大会」を開催。

 姫路市文化国際交流財団発行の季刊文化誌「BanCul(バンカル)」(播州カルチャーの略)の編集長でもある。同誌は1991年の創刊以来、今年で30年を迎えた。また中元さんは多くの文化関連の役職に就き、兵庫県の文化振興に貢献。ともしびの賞、ふるさと文化賞の選考委員も務めている。

平成の大修理完成直後の姫路城を取材中のバンカル編集委員らと=2015年3月

 忘れられないのは、95年1月に発生した阪神淡路大震災。神戸・三宮の神戸新聞社が壊滅し、本社機能がマヒ状態の中、論説副委員長だった中元さんを中心に論説委員が各被災地、避難所などを足で取材し、翌18日から朝刊の一面コラム「正平調(せいへいちょう)」に、復興を願って震災コラムの連載を始めた。中元さんは19日に「(前略)それにしても途方もない被害だ。都市はこんなにもろかったのか。復興には地震を上回るエネルギーが要る。歯を食いしばって頑張ろう」と綴った。コラムは101日続き、中元さんは80日間を担当したという。一連の報道で石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞、井植文化賞などを受賞した。11月の兵庫県文化賞贈呈式に妻英子さんと出席した中元さんは語った。「思いがけない受賞。地域学研究活動が評価されたこと、研究活動を支えて下さった皆様のおかげでの受賞であり感激です。体の続く限り地方分権に向けて頑張り、バンカルも発行し続けます」

「姫路城100ものがたり」「西国将軍“池田輝政”姫路城への軌跡」などの著書

中元孝迪さんプロフィール

(公財)姫路市文化国際交流財団理事長、日本記者クラブ、日本ペンクラブ会員。兵庫県功労者表彰、姫路市教育功労表彰、同市芸術文化賞、姫路市民表彰。「姫路城100ものがたり」「姫路城 永遠の天守閣」「日本史を変えた播磨の力 地域学-分権史観の試み」など著書多数。姫路市在住、81歳。

「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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