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すずかけ 令和3年11月号 素顔拝見(第287回) 令和2年度兵庫県芸術奨励賞受賞者 美術家 山村 幸則(やまむらゆきのり)さん

独自の幅広い表現で作品具現化

 陶芸制作から出発した現代美術家。「ひと言では表現しきれない活動が評価されて大きな賞を頂き身が引き締まる思いです。今後の期待が込められた賞であり、さらに頑張り観る人の五感に届く作品作りに励みます」と受賞の喜びを語った。

 大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コースを卒業後、研修作家として滞在した滋賀県陶芸の森で出会ったノルウェー人作家の「世界を舞台に制作してみないか」のひと言が人生を変えた。1997年8月、ノルウェーに向かい、ノルウェー王国国立オスロ芸術大学にて1年3ヵ月、滞在制作を行った。2001年ごろからC.A.P.(芸術と計画会議)の活動に参加。そこで様々な作家と表現に出会い、社会とも関わりながら、もっと自由にもっと楽しく、今を生きることを表現とつなげたい思いが募り、制作を始めた。

 国内のほか、米国、独、ケニアなど国外でも滞在制作する山村さん。土地ごとの歴史や文化、人々と交流する中で、心動かされたことについて素材や表現方法を模索し、多くの人々の力添えを得て作品を具現化する。「その過程と作品を介して生まれる多様な関係性、つながりを大切に考えています」。作品は平面、立体、映像、パフォーマンスなど幅広く多彩だ。

 県立美術館で07年に開催された「美術の中のかたち―手で見る造形 山村幸則 手ヂカラ目ヂカラ心のチカラ」展に出展した作品制作過程が話題に。同展は視覚に障害のある方にも足を運んでもらう目的で開催。作品は山村さんの右手と指紋を拡大し、神戸の地場産業であるケミカルシューズの素材である合成皮革を用いた210×570㌢の「手」に決めた。

 神戸市須磨区板宿で制作を開始。かつて夜間中学校で出会った生徒で、元ミシン工の方々が合成皮革で指紋を縫い合わせる膨大な作業を担当。「制作は感動と興奮の連続でした。『手』をめぐる物語はまるで昨日のことのように心に余韻を残しています」と振り返る。

 「好奇心旺盛」という山村さんは銀杏いちょうの葉をビジネススーツにつけ、街を散策、神戸牛の子牛を乗せたカートを押したり綱を引いて神戸市内を練り歩いたなど、驚きの企画を繰り出すことも。

「星のしずく」2021年

 写真の「星のしずく」の素材は酒造会社提供の色鮮やかな空びんを用い、六甲山系の原土を型取りし、手のひら大に成形し作品化。山村さんが「古丹波自然釉三耳壺(ゆうさんじつぼ)(室町時代)」を放り投げ、受け止めるのは「時のかけら」。

 11月2日(火)から7日(日)まで、同市長田区の兵庫県立神戸生活創造センターギャラリー(新長田合同庁舎1階)で、「Kobe Bottle Art Project EXHIBITION」が開催予定。同区のソウルドリンク〝アップル〟や神戸に初めて伝来されたとされる〝ラムネ〟のビンなどを素材にした山村さんと美術家の矢野衣美(えみ)さんの作品が展示される。入場無料。「今回、長田の街にて滞在制作を行いました。地域の魅力、再発見の機会となればうれしいです」と山村さん。

「時のかけら」2020年

山村幸則さんプロフィール

日本現代陶彫展マケット展(第6・8回特別賞)、2010年度神戸市文化奨励賞、六甲ミーツ・アート芸術散歩2013公募大賞準グランプリ受賞。シスメックス㈱テクノパーク(神戸)にパブリックアート設置。兵庫、大阪で非常勤講師として後進を指導。西宮市在住、49歳。

「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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