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すずかけ 令和3年7月号 素顔拝見(第283回) 令和2年度坂井時忠音楽賞受賞者 声楽家(バリトン) 桝 貴志(ますたかし)さん

安定した歌唱力で注目の逸材

 大阪音楽大学声楽科卒、新国立劇場オペラ研修所第5期生修了。存在感ある演唱が高評価を得、注目される逸材。「安定した歌唱力に豊かな声量。人間的魅力もあり、今後さらに円熟味を加えて素晴らしい声楽家となることに間違いありません」と西宮音楽協会事務局長・大阪フィルハーモニー交響楽団パーソネルマネジャーの服部喜久男さんは期待する。11月5日には受賞記念のリサイタルが兵庫県民会館けんみんホールで開かれる予定だ。

 幼いころから歌うことが大好き。小学2年からはエレクトーンを習い始め、サッカーやテニスも楽しんだ。中学3年時、担任教諭との三者懇談が声楽家へのきっかけとなった。担任に成績が良い音楽をやったらと勧められ音楽担当教諭と話すうち、奈良県内には県立高円(たかまど)高校に唯一の音楽科があると知らされ受験。結果、聴音などもクリアし、見事に合格。「本気でプロの声楽家を目指そうと試験に臨みました。一番好きなのは音楽だと思ったからです」と振り返る。副専科でピアノとヴァイオリンを選択。1週間に音楽の授業が12時間もある音楽漬けの日々を過ごした。
 努力が実り、3年の秋、第51回瀧廉太郎記念音楽祭・第6回全日本高等学校声楽コンクールで最優秀賞(第1位)に輝いた。奈良県からは初の快挙だった。その後、大阪音大を首席で卒業し新国立劇場オペラ研修所に。桝さんは最年少での研修所入学者だという。

五島記念文化財団オペラ新人賞海外研修成果発表リサイタルで熱唱する桝さん=2020年、東京都内で

 バリトンはテノールとバスの中間の男性声域。「私の声はテノールに近いハイバリトンでミュージカル、オペレッタでも歌えるのが強みですね」「映像やCDを何度も見聞きして歌い方をつかみ、良い部分を参考に感覚、五感に覚えさせて習得。瀧廉太郎記念音楽祭では初回優勝者で大好きな故・立川清登さんのCDを百回以上も聞きながら練習しました」と心地良い美声で語った。当たり役はオペラ「セビリアの理髪師」のフィガロ。ヴァチカン国際音楽祭2018に出演し、サンピエトロ大聖堂でミサ曲などを演奏後、枢機卿と握手を交わしたことが今も忘れられないとのこと。兵庫県立芸術文化センターをはじめ国内外のホールでのオペラやミュージカルなどにも多数出演。
 今回の受賞には「名誉ある賞を頂き、とても光栄です。賞に恥じないよう身を引き締め、自分にしかない魅力を持った声楽家を目指し精進します」故郷での山歩きが趣味。

 コロナ禍でステイホームの日々。懐かしい日本のメロディーで彩りを――桝さんと妻でソプラノ歌手の高嶋優羽(ゆは)さんは昨年秋、ピアノ・アコーディオン伴奏で歌ったCDアルバム「昭和ロマン~美しき日本の残像」を制作、好評だ。「長崎の鐘」「荒城の月」「庭の千草」など22曲を収録。1枚3千円(税抜き)。購入や問い合わせは「カリスレコード」(050・7117・2653)へ。

息もぴったり。夫婦で演奏し収録したCD

桝貴志さんプロフィール

奈良市出身。二期会、日本演奏連盟、堺シティオペラ。西宮音楽協会各会員。第27回奏楽堂日本歌曲コンクール第1位・木下記念賞(金)・中田喜直賞を併せて受賞ほか著名な賞を受賞。各地で様々なオペラ、オペレッタ、ソロリサイタルに出演。西宮市在住、41歳。

「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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