2021.06.01 (火)
すずかけ 令和3年6月号 素顔拝見(第282回) 令和2年度坂井時忠音楽賞受賞者 ピアニスト 坂本 彩(さかもとあや)さん
度胸よく堂々と力強く弾ききる
今後の活躍が注目される新進気鋭のピアニスト。東京藝術大学卒業後の2011年から明治安田クオリティオブライフ文化財団奨学生、文化庁新進芸術家海外派遣員として渡独、ベルリン芸術大学、同大学院のピアノソリスト科、室内楽科を修了。19年に帰国後は各地で演奏活動を展開する一方、東京藝大ピアノ科非常勤講師として後進の指導にあたっている。
4歳のころ、2歳年上の兄が通う音楽教室に出かけた際、楽しい雰囲気に「私も弾きたい」とピアノを習い始めた。将来の進路に悩んだ高校三年時に一大転機が訪れた。世界大会の一つ、「浜松国際ピアノコンクール」に応募し、予備審査から本大会に進んだのだ。「本大会に選出されて、14曲(2時間半のレパートリー)を練習しなくてはならず、進路に悩む時間が吹っ飛びました(笑)。予備審査、本大会とも天才ピアニストの中村紘子氏(故人)や名だたる海外教授の前で演奏し、世界各国から集まったコンテスタントの演奏にも刺激を受けました。凄いところに来てしまった‥と感じましたが、自分もこんな演奏ができるようになりたい!と決意。中学時代から抱いてきたピアニストを職業にとの思いに確信が持てたコンクールで、人生のターニングポイントでした」と振り返る坂本さん。東京藝大を経てベルリン芸術大学へ。パスカル・ドゥヴァイヨン教授に師事。欧州各都市を中心に演奏活動も。「始めの頃は話せない独語、異国での新しい環境、それでも前進したい思いで、何をするにもがむしゃらでした」。音楽教育では本場のドイツ。「演奏技術に加え、音楽に向き合う姿勢を見直す時間でした。さらに、その姿勢をいかに人生とリンクさせ、どのように音楽家として生きていくのか、自分なりのポリシーを深く考えるようになりました。ヨーロッパ音楽の本場に暮らしそこで得た経験や人々との出会いは財産です」。生活は自由で、音楽に集中できる環境だった。
「ピアノはどんな音でも出せる楽器。世界観をひとり占めできるのが魅力です」と坂本さん。好きな作曲家はブラームス。「どの作品も優しさや愛情に溢れていて、人間味を感じます。中でも『ピアノソナタ3番』は16歳の時から弾き続けています。エネルギッシュでロマンチックで壮大な物語をみているような作品で大好きです」。
週に一日、母校の東京藝大で学生を指導する。学生時代に師事した同藝大の青柳晋(すすむ)教授は「本番では度胸が恐怖心に打ち勝って、堂々と力強く自分の演奏を弾ききるタイプ。演奏家として本当の成長を遂げるのはこれからなので、求心力を高めることをやめず情熱が途切れないことを願っています」と激励する。
受賞について「兵庫を離れて10数年になりますが素晴しい賞をいただき光栄です。帰国して環境が大きく変化する中、昨年は兵庫県で念願のオールブラームスプログラムのソロリサイタルを開催できました。今後は更に腰を据えて演奏活動に取り組みます。CDも出したいですね」。笑顔が魅力的。明石市立西部市民会館で9月18日に、坂本さんらによる「明石クラシック」室内楽公演を予定している。
坂本彩さんプロフィール
第19回アルトゥール・シュナーベル国際ピアノコンクール最高位・第2位。第1回アミグダーラ国際ピアノコンクール優勝。松方ホール音楽賞など国内外で数多く受賞。19年にはNHKドキュメンタリー番組「蜜蜂と遠雷-若きピアニストたちの18日間」で演奏活動が取り上げられた。明石市在住。
「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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