2021.05.01 (土)
すずかけ 令和3年5月号 素顔拝見(第281回) 令和2年度亀高文子記念―赤艸社賞受賞者 美術作家 柴田 知佳子(しばたちかこ)さん
力強い筆遣いで意欲的に制作
3月の歴代受賞者作品展会場での贈呈式で、柴田さんは喜びを話した。「兵庫県で活躍し尊敬する作家の方々が受賞、私もあこがれていた立派な賞をいただき、ありがとうございました。賞に恥じないよう精進します」。
抽象表現主義からスタートした抽象画家。幼いころから絵を描き、見ることが好きだった。美術史などにも興味があり美術にかかわりたくて神戸大学教育学部美術科を卒業し、同大学院美術教育研究科を修了。制作技術は自ら模索し研鑽を重ねて習得。大学院の時から抽象画家を目指して制作、個展やグループ展で発表。兵庫県立西宮高校で非常勤講師として後進の指導も始めた。その後、結婚し家事、育児に追われたが、絵筆だけは離さずグループ展に出展を続けた。
「作品と空間との関係について思考を深め、近年意欲的に活動。作家の内心が色となり形となり、作品に強いエネルギーを感じる優れた美術家である」が受賞の理由。綿布にアクリル絵の具や顔料で描く大作が多く、ダイナミックな筆遣いと白を巧みに効かすなど色遣いが魅力的だ。柴田さんは強調する。「私にとって絵画とは、場を豊かにする契機です。絵画という存在が、その中に人を招き入れるだけではなく、現実の場を変貌させる、見る人の認識を一新する、そんな体験のきっかけとなることを期待しています」。
活動の場や色遣いは多彩。「絵画と場」の制作で転機となったのが、今はない宝塚市内の料理旅館の廃墟となった大浴場のために描いた「SILENT ROCK」(2016年作)。素焼き色で描いた作品は、ガラス窓から入る自然光が印象的な大浴場に展示後、大阪のオフィスビルのホール、パリのアートフェアでは、グラン・パレの天井の下でも展示。全く異なった場所でも存在感を発揮した。また写真(下部)の作品は、18年作で、絵画の中に「空間=場」を作ることを目指した。柴田さんは「見る人が作品に共感する時、画面には特別な時間が湧き上がる気がします。私は甘い生活のタイトルを与えました」。「かつては硬質の抒情性を帯びていたが、近作では暖色系の色彩を浸透させるなどで馴染みやすい画面をかたちづくり変貌しつつある」と美術評論家の尾崎信一郎氏。大阪で公開制作にも挑戦。「絵画が立ち上がる瞬間を同じ方々と共有。絵と場の関係に関し新しい発見をもたらしてくれたように感じました」「今後も大作制作に励みます。さらに、いつの日か、私だけの空間を設け、その空間自体をアートにする夢を実現したい」と柴田さん。
バス釣りが趣味。ボートを持ち、操縦免許も取得ずみ。マイカーの屋根にボートを積み、琵琶湖、岡山県内など各地にバスを求めて出かける。バイクでツーリングも。
大阪市北区西天満のギャラリー白で、10月4日から8日まで個展を開く予定。7月には兵庫県民会館で受賞記念展が行われる。
柴田知佳子さんプロフィール
大阪市出身。国立明石高等専門学校でも非常勤講師を勤める。「宝塚現代美術てん・てん」の常連作家。兵庫県展とFACE展2021(SOMPO美術館)で入選。ギャラリー白、コバヤシ画廊(東京・銀座)など兵庫県内外で個展、グループ展多数。宝塚市在住。
「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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