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すずかけ 令和4年4月号 素顔拝見(第292回) 令和3年度兵庫県文化賞受賞者 兵庫県立芸術文化センター総括アドバイザー 林 伸光(はやしのぶみつ)さん

「芸文」の事業主導し成功に導く

 芸術文化の事業運営に携わって約半世紀になるプロフェッショナルの林さん。芸文センター開館前の2003年、ゼネラルマネージャーに就任し事業面の総括責任者として、佐渡裕芸術監督とともに、事業企画立案、広報、公演実施、兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC(パック))創設、先行予約会員制度導入などで手腕を発揮。開館以来16年間で入場者数750万人超を記録し、運営を成功に導いた立役者の一人だ。センターは05年、阪神・淡路大震災復興のシンボルとして西宮市に開館。「芸文」で知られる。

 神戸大学卒業後、朝日放送入社。大阪のザ・シンフォニーホールで開館準備から、ホールと自主事業運営を担当。ゼネラルマネージャー就任のきっかけは音楽祭で出会って以来、同ホールで「第九」など一緒に仕事をした佐渡さんからの依頼。「林さんやったら、オープンの日から世界一のお客様が迎えられる劇場にできるから一緒にやろうよ」が決め手に。「佐渡さんは将来性があり信頼できる音楽家。世界一以下の言葉は舞台上の音楽家と場内のお客様が一体となれる劇場を目指そうとの意味だと理解。20年以上劇場を運営してきた私には大きな殺し文句でした」と振り返る林さん。

 芸文への思いは「幅広い公演を通して県民の皆様に芸術文化を広め、震災にあった街を元気にしていくことだ」。熱い語り口が印象的。開館記念の「第九」演奏会を半年前に発売したところ申し込みが殺到。事業、総務、舞台技術、楽団職員が数日間電話対応に追われた。追加公演も含め売り切った後、全員に強い一体感と全スタッフによる独自のやり方が生まれた。この手法は規模を拡大し現在も活用。一方、登録無料の先行予約会員は年間平均5万5千人を維持。会員には、毎月公演案内ちらしを送付し一般発売に先立つ先行予約を電話中心で受ける仕組み。そのため総売り上げの80%以上を直接販売。チケットを売り切る劇場の支えにも。

楽屋で談笑する佐渡芸術監督(左)と林ゼネラルマネージャー

 あらゆるジャンルの自主事業を企画・上演。林さんが誇るのは、「佐渡芸術監督プロデュースオペラ」だ。世界レベルの本格的オペラの制作によってその魅力を伝え、総入場者増につなげる狙いで、毎年7月に新しく制作し上演。初回は「蝶々(ちょうちょう)夫人」。今年7月にはコロナ禍で延期した「ラ・ボエーム」を予定。入場料500円の「ワンコイン・コンサート」も人気。平日の午前11時半から1時間の公演で、関西出身者や地元実力派若手音楽家を起用。年間50万人が入場するわけを「良質な作品を多く用意、売り切り前提の価格設定にしたなどでは…」と林さん。  文化賞について「裏方の私が頂くのは(せん)越だと思い悩みました。だが、職員や県民が文化を生み出したことを検証して頂けた結果だと思い直し、ありがたくお受けしました。全スタッフの熱い思いとクールな戦略で成り立ち、皆の知恵を蓄え成長してきた劇場。相談役として支えます」。昨秋の受賞後、職員から花束と記念品が贈られた。

オペラ「蝶々夫人」の上演の際、グッズ売り場で蝶々柄の浴衣姿で華やかさを演出した職員をねぎらう林ゼネラルマネージャー

林 伸光さんプロフィール

 神戸市出身。昨年4月から芸文センター総括アドバイザー。兵庫県文化懇話会委員など歴任。神戸大などでアートマネージメントに関する講師を務める。芸文センター館長(知事)表彰受賞。著書(共著)に「チケットを売り切る劇場…兵庫県立芸術文化センターの軌跡」。宝塚市在住、73歳。

「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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