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すずかけ 令和3年9月号 素顔拝見(第285回) 令和2年度兵庫県芸術奨励賞受賞者 チェロ奏者 北口 大輔(きたぐちだいすけ)さん

チェロ1本で新演奏の境地開拓

 日本を代表するチェリストの一人で、関西でトップクラスの日本センチュリー交響楽団(大阪・豊中市)の首席チェロ奏者だ。その力量は音楽専門誌から高い評価を得ている。近年はチェロ1本でのジャズやロック演奏、無伴奏チェロでの作曲・編曲作品を発表するなど新しい演奏の境地を開拓し成果をあげている。

 父は元関西フィル首席チェロ奏者。母はピアノ教師・声楽家の音楽一家。12歳から父の手ほどきでチェロを弾き始め、中学3年ごろから父の勧めで東京藝術大学講師だった林俊昭氏に師事し研鑽(けんさん)。学び始めて間もない1996年にアゼリア推薦新人賞を受賞し、関西フィルとサン=サーンスの協奏曲でデビュー。翌年、東京藝術大学音楽学部器楽科に入学した。2年生のころ、他学生の演奏レベルのすごさにショックを受け「頑張らねば…」。早朝や夜、自主練に励んだ。やがて多くのコンクールで優勝、入賞するように。国内、欧州各地の音楽祭にも参加した。同藝術大大学院修士課程修了後、東京都交響楽団チェロ奏者などを歴任、2011年4月から現職の日本センチュリー首席チェロ奏者に。「林先生からは演奏技術はもちろん、仕事への心構えなど多くのことを学びました。感謝しています。譲り受けたチェロを今も愛用しています」と穏やかな語り口で振り返った。

黛(まゆずみ)敏郎さん作曲のチェロ独奏曲「BUNRAKU」を演奏する北口さん=2018年、大阪で

 弦楽器のチェロ。北口さんは「人間の声を全てカバーする音域の広さと豊かな音色が魅力です」。さらに「作曲家本人になりきって楽譜を読み取り演奏しています。私の強み?周りの音をよく聞き取る事と、指揮者が目指す意図をいち早く察することです。首席は支えてくれている他奏者の前に立つ班長です」。音楽専門誌の評価は「全く危なげないソリストぶり、余裕の力演」(音楽の友誌)「実力派。頼もしい存在感を披露」(モーストリー・クラシック誌)などと賞賛。
 「いい音を追求するためなら一日中練習も」と北口さん。コロナ禍で長引く自粛期間中も「いずれは収束する事を考えると、それまでの過ごし方が大事なので、毎日欠かさず練習しています。内容は基礎練習、教則本の復習にバッハの無伴奏曲の中から一つの組曲を弾くなど。コロナ禍の期間が良かったといえる生活を心がけています」
 北口さんはバッハのゴルトベルク変奏曲を編曲しチェロ1本で演奏することを今後のライフワークの一つにしたいという。20年に初演、7月には神戸でも演奏。「世界初の試みのはず。誰もやっていないから逆にやりたくなったのです。編曲に約3年かかりました」。奨励賞の受賞には「頂けるとは思っても見なかったので素直にとてもうれしい。今後の励みにし精進します」。10月17日に兵庫県立芸術文化センターで開催予定の宝塚市交響楽団定期演奏会で、北口さんが同交響楽団と共演し、ドヴォルザークのチェロ協奏曲など3曲を独奏。9月10日から一般発売。問い合わせは宝塚ベガ・ホール(0797・84・6192)へ。

10月17日のコンサートに向けて宝塚市交響楽団を指導する北口さん=21年8月

北口大輔さんプロフィール

西宮市在住。大阪・藤井寺市出身。大阪音楽大学特任准教授として後進の指導にもあたる。大阪府舞台芸術奨励新人賞。和歌山音楽コンクール第1位、和歌山市長賞、弦楽四重奏によるジャズ、ロック演奏で大阪文化祭賞奨励賞など受賞。無伴奏チェロのための「キラキラ星変奏曲」楽譜出版。42歳。

「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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