2022.03.04 (金)
すずかけ 令和4年3月号 素顔拝見(第291回) 令和3年度ふるさと文化賞受賞者 人形芝居えびす座座長 武地 秀実(たけちひでみ)さん
令和のえびすかき 人形操り熱演
えびす神社の総本社・西宮神社近くにあり阪神・淡路大震災で被災した西宮中央商店街復興のシンボルにと2006年から人形遣い「えびす(戎)かき」再興を主に「人形芝居えびす座」を結成、座長兼太夫として活動する武地さん。同神社境内で毎月10日に催される「十日参り」のほか各地で考案した「えびす舞」を年間約50回上演、「令和のえびすかき」と呼ばれている。
西宮市史や武地さんによると、室町時代には「えびすかき」と呼ばれた傀儡師が同神社周辺に暮らし、神社の仕事を担ったり、人形芝居をしながら全国を行脚し、えびす信仰を広めていたという。その秀でた人形操りが淡路や大阪に伝わり、人形浄瑠璃や文楽へと発展、ユネスコの世界文化遺産に登録された。
「えびすかき」再興は大変だった。江戸時代に途絶えたため、詳しい内容が伝承されていなかったからだ。能に狂言、舞に歌や語り、その言い回しに発声法などを一から勉強した。文楽協会技芸員(人形)で人間国宝の吉田和生氏(兵庫県文化賞受賞者)と出会い交流も。武地さんは話した。「さすらいの芸人『えびすかき』。縛られず苦難があっても、笑って吹き飛ばす姿勢に共感、奮闘しています。人形芝居は太夫としての型づくり、現代風な独創性を伝統に加えた脚本作成に苦労します。ある時、疫病を退散させる妖怪アマビエを登場させ、コロナウイルス退散をと語り祈ったところ大受けでした(大笑い)」。勉強は今も続ける。
現在、囃子方(桶太鼓)として14年前に加わった松田恵司さん(60)と演じる。着物に袴姿の武地さんは、えべっさんが幸せ配りにやってきた―などと語りながら登場。太鼓や語りに合わせ、首から下げた箱に入った高さ60㌢のえびす人形を巧みに操り、鯛を釣り上げ、御神酒の杯を傾け、えびす舞を舞う。その間10~20分。大忙しで体力も必要。武地さんは「世界平和と皆さんが幸せに過ごされるよう祈りながら舞います」「ゼロから学んだ太鼓。面白いという子らの笑顔に私も喜びが。楽しみながら続けます」と松田さん。
講演は海外でも。11年以降、仏で開催されている「世界人形劇フェスティバル」に4回出演、東南アジアなどでも披露。また次代を担う子供たちにも芝居の歴史などを伝えようと西宮市立浜脇中学校生徒に「西宮戎舞」を教え、南あわじ市立南淡中学生との共演も、毎年企画・運営している。
受賞について「吉井良昭西宮神社宮司、同商店街や地元の皆さまの支援があっての受賞、ありがとうございました。担い手を育て西宮の宝を後世に伝えたい。また、西宮の名物「門付け」となり、人々の記憶に残るよう誰もが感動できる芝居・語りを目指し演じ続けます」と武地さん。 武地さんらは、3月6日午後、兵庫県庁南の兵庫県公館で開催の「伝統文化ふれあい広場」で「えびす舞」を披露する予定。無料。なお出演依頼(出演料は要相談)は有限会社「ともも」(0798・39・1723)へ。
『えびすかき』がやって来た! の動画がユーチューブでご覧いただけます。
武地秀実さんプロフィール
愛媛県出身。青山学院大学卒。フリーライターなどを経て、芦屋、西宮の地域情報紙「ともも」発行会社経営者兼編集長。約7万部発行。戎座人形芝居館事務局長。えびす座として人間サイズのまちづくり賞知事賞受賞、地域貢献活動で西宮市政90周年市長感謝状受賞。西宮市在住、66歳。
「素顔拝見」は、兵庫県芸術文化協会が発行する月刊の文化情報紙「すずかけ」に掲載しているインタビュー記事です。「すずかけ」は、兵庫県芸術文化協会友の会会員の皆様のご自宅に毎月お届けしています。
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