芸術文化協会topへ


平成18年度ふるさと文化賞 −竹中 健一 さん 播州毛鉤 伝統工芸士)−

ふるさと文化賞受賞

竹中 健一 さん 
(播州毛鉤 伝統工芸士)

播州毛鉤の繊細な美を究める





昭和13年西脇市生まれ。
昭和29年から家業の「龍王鈎本舗」の毛鉤製作に従事。
昭和62年には代表者に就任し、現在に至っています。
平成5年に経済産業大臣より「播州毛鉤」の伝統工芸士の認定を受けました。
以降10年間にわたり、伝統的工芸品産業の振興に尽力し、後継者育成事業の基本的技術習得事業の講師を務めました。
また、国際フィッシングショーなど各種展示会等への出展を通じ、播州毛鉤の普及PRに貢献してきました。
平成10年西脇市技能功労賞受賞。
平成15年兵庫県技能顕功賞受賞。
平成17年より現在まで、播州釣針協同組合専務理事。
西脇市在住。
68歳



 加東市上滝野の加古川・闘龍灘で全国一早く鮎漁が解禁。

 6月に入ると全国各地で次々と鮎漁が始まります。

 今回の「素顔拝見」は、鮎釣りに用いられる毛鉤を作って50年余の竹中健一さんに登場してもらいました。



「毛鉤は水生昆虫に似せて作った疑似針です。
昔から西脇は毛鉤作りの職人がたくさんおりまして、現在でも毛鉤の全国生産の90%を作っています。
私の親父も毛鉤職人で、よそで修行した後、昭和27年に独立して『龍王鈎本舗』という会社を作りました。
私は中学に上がった頃から、毛鉤作りを親父に教えてもらいました。
朝早うから晩遅うまで、親父と並んで一日中毛鉤を作るんですが、若いもんだから夜更かしして仕事中に、つい居眠りしてしまう。
そうしたら、親父に針でチクッと背中を刺されるんですわ。
あれは、痛かったねぇ」

 休みは月に1回という忙しさで、毛鉤を作れば作るほど、売れたそうです。
「よう売れたのは親父の時代。私が会社を引き継いでからは、河川の汚れがひどくなったせいで鮎が減り、売り上げも伸びませんでしたなぁ」

 環境汚染の改善が叫ばれるようになってからは、少しずつ川も美しくなり鮎も戻ってきました。

 毛鉤は1cmに満たない小さな鉤です。数種類の鳥の羽枝を絹糸で巻きつける作業は、熟練になるまで少なくとも5年以上かかります。
「指先が肝心の作業でね。
 爪が割れたり、手が荒れたりすると仕事にならんですよ。
 小さい物を見続けるから、私は30歳過ぎから老眼鏡をかけてますわ」
 この極小の鉤を作るのに、なんと16もの工程があるそうです。
 機械化の現代にあっても、その工程は全て手細工のみ。
 気が遠くなるような緻密な作業の連続です。
 しかも毛鉤は500種以上の種類があります。
それらの一つ一つに職人たちは、「二日月」「黒三光」「夕映え」「青ライオン」など愛着のこもった名前を付けてきました。
「鮎釣りでは川の水の色、温度、水深、時刻、それらに合わせた鉤を早く見つけるのが多く釣るコツなんですわ。
 だからどなたも何十種類もの毛鉤を持って川に行かれます」

 毛鉤は水生昆虫を模して作られていますが、虫をリアルに再現したものではありません。
 「魚のためというよりは、釣り人の目を楽しませるために美しく仕上げているともいえますね」
 漆と金箔を施した鉄鉤に、色とりどりに染められた鳥の羽枝を巻きつけ、幻想的なまでに美しく、実在しない昆虫を作り出します。
 毛鉤は疑似餌などというジャンルを超えた一級の芸術工芸作品なのです。
 平成5年、竹中さんは経済産業大臣による「伝統工芸士」の認定を受けました。
 現在も学校や全国各地のイベントなどで、製作実演を行い、播州毛鉤のPRや技術後継者の育成に尽力しています。
 「座りっぱなしの作業で若い人が好まんようですが、うちは息子が継いでくれています」
 伝統に加え新しい感性を加えた播州毛鉤の誕生が期待できそうですね。

 さて、毛鉤を作って半世紀の竹中さんですが、鮎釣りの腕前はどうなのでしょう。
 「若い頃は、毛鉤を作るばっかりで、釣りをする間もなかったです。20年ぐらい前から、鮎釣りを始めました。
 闘龍灘をはじめ、あちらこちらの川へ釣り仲間と出かけますよ。
 私らの仕事は鮎がおらんようになったら、どうにもなりません。

 鮎次第です。

 日本中の川がきれいに澄んで、鮎がたくさん泳ぐようになってほしいですね」

 今日も「龍王鈎本舗」の作業場では、竹中さんの隣に息子さんが座り、2人が巻いた毛鉤を、一番端に座る竹中さんの奥さんが玉に金箔を貼り付け仕上げをしています。

 3人は裸電球の灯りの下で、ラジオを聴きながら黙々と作業を続けます。

 その風景はどこか懐かしく、昔はどこにでも見かけた家内工業、家族が協力してものづくりをした時代の温かい雰囲気を思い起こさせてくれます。




up date 2007/5/31

■ 兵庫県芸術文化協会 ■
|HOME| |兵庫県民会館| |ピッコロシアター| |原田の森ギャラリー| |芸術文化センター| |リンク| |メール|