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兵庫県芸術奨励賞 −多 田 容 子 さん (作家) 素顔拝見−



平成16年度 兵庫県芸術奨励賞受賞


    多 田 容 子 さん (作家)


          古武術の真髄に迫る時代小説





1971年香川県高松市生まれ。

兵庫県尼崎市育ち。

1993年京都大学経済学部卒業後、保険会社に入社。

同年12月に退職、作家を志望。

1996年、97年、98年に時代小説大賞の最終候補になりました。

1999年「双眼」でデビュー。

その後「柳影」「やみとり屋」「秘剣の黙示」「甘水岩」を発表。

最新刊は平成17年1月刊行の「月下妙剣」です。

小説のほか「武術の創造力」(甲野善紀共著)「不滅の侍伝説『子連れ狼』」(小池一夫共著)等があります。

柳生新陰流二蓋会会員、同流兵法・小転中伝、居合道三段、手裏剣も。

尼崎市在住。




 居合道3段に加えて柳生流新陰流を学び、手裏剣も打つという多田容子さんは、意外に小柄で女剣士というよりは、着物がよく似合う、しっかり者の町娘という風情です。
「日頃はTシャツにGパンという格好ですが、時々、着物で外出すると、落ち着きます」

 さて、小さい頃の多田さんは、外で遊ぶよりは自分で作った空想の世界で遊ぶのが好きな少女だったそうです。
「3歳になるかならないかの年齢でも一人で留守番をすることが平気でした。空想遊びを延々と続けて退屈もせず、疲れたら寝てしまうんです」
 家にいることが好きな多田さんは、当然のように、超がつくほどのテレビっ子になりました。
「中学から高校当時は、夕方再放送される時代劇にはまりました。『大江戸捜査網』が大好きでした。先が読めないストーリーが面白かったですね。千葉真一氏の『柳生十兵衛』には、夢中でした。映画では市川雷蔵の『眠り狂四郎』。見尽くすほど見ました。ところが当時時代劇は下火になっていて放送が少ない。それじゃあ、自分で時代物を書けばいいんじゃないかと」
 さっそく大学在学中に時代小説に挑戦しました。
「ストーリーはどんどん浮かんでくるんですが、テレビっ子なもので、括弧書きのセリフが並んで間にチャンバラの動きが加わったようなものになってしまいました。私はそれまで本をほとんど読んでいなかったのですが、私の周りには読書家が多くて、そんな人たちがいろいろアドバイスをくれました」

 同じくその頃、友人に誘われて居合道の演武会の見学に出かけた多田さんは、日本刀を使いながら一人でできる型の美しさにすっかり魅了されました。
「その演武会会場ですぐに居合刀を買い、4回生でしたが大学の居合部に入部しました。就職活動もそこそこに居合いの稽古をしました」

 大学卒業後、多田さんは保険会社に就職し、東京勤務になりました。

「会社勤めは、当たり前ながら現実が百パーセントで空想する時間がない。小説を書く時間もない。耐え切れず疲労困憊して8か月で退職しました」

 今後は作家として生きる決心をした多田さんに、大きな影響を与える人物が現れました。

武術家・甲野善紀さんです。

「力に頼りがちな現代武術と異なり、敵に動きを悟らせない、思いもかけない発想で、相手を驚かせ圧倒し攻撃を無効にさせるのが甲野善紀さんの武術です。これは本来、古の武術家が実践していた武術なのです。

甲野善紀さんの稽古会に行き、その技を目のあたりにしたショックが私に『双眼』を書かせたと言っても過言ではありません」
 柳生十兵衛を描いたデビュー作「双眼」は、武術の理を小説のなかで表現したことが新しいと高い評価を受けました。
 小よく大を制す。骨格の動きが主で筋肉が従。パワー増強より省エネ。地を蹴らない。踏ん張らない。非日常の動きで相手の予測を外す等々、古武術の特徴を取り入れた小説を多田さんは次々と発表しました。同時に自分自身も柳生新陰流に入門。手裏剣の稽古も始めました。

「最新作の『月下妙剣』は五年ぶりに柳生十兵衛に取り組んだものですが、稽古をするたびに新しい発見があり、書き終えた文章をたびたび手直しする結果になりました」
 「月下妙剣」は、多田さんが経験した武術の稽古と小説がダイナミックに結合した大作です。

 関西育ちの多田さんは大のお笑いファンでもあります。ダウンタウンの松本人志さんが特にお気に入りです。
「松ちゃんは、お客の予測をはずしまくる発想で笑わせます。独特の視点と裏があり、見事に話をひっくり返すのです。これは、ある意味古武術に通じるものです」
 「ナンバ走り」の末續選手や巨人の桑田選手などスポーツ界でも古武術を生かそうとしている人たちがいます。
 どんな変化にも対応できる古武術の精神は、明日が予測不可能で、不安に満ちた現代にこそ必要なのかもしれません。





up date 2005/5/29

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