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兵庫県芸術奨励賞 陶芸家 市野 哲次さん 素顔拝見−


兵庫県芸術奨励賞受賞者

陶芸家 市野 哲次さん

「独自の世界を創り出したい」



丹波焼の代々の窯元の家に生まれる。
1985年に嵯峨美術短期大学、
1986年に瀬戸窯業職業訓練校を卒業し、丹波立杭で陶芸家の道へ。
1998年第6回「花の陶展」大覚寺賞、
1999年県展神戸新聞社賞、
2003年第32回日本伝統工芸近畿展新人奨励賞、
2004年伊丹国際クラフト展白雪酒永代覚帖仕込み賞、
2007年神戸ビエンナーレ「現代陶芸展」審査員特別賞など多数の公募展で入賞。
平成20年度兵庫県芸術奨励賞受賞。阪急梅田本店など全国の百貨店などで精力的に個展を開催している。
伝統技法を継承しつつ線の文様が際立つ個性あふれる作品を創作し続け、丹波焼きを代表する作家として今後の活躍が期待されている。
兵庫県工芸美術作家協会会員、日本工芸会正会員。
45歳。

               


 丹波立杭に生まれ、お父さんの悟さんも陶芸家という市野さんは、子どもの頃から自然な形で陶芸に触れてきました。
陶芸家になろうと決めたのは高校3年生の夏。
 それまでは陸上の長距離に打ち込んできましたが、周囲の人から勧められて京都の嵯峨美術短期大学への入学を目指します。
デッサンを習いはじめ本格的な受験勉強。
無事入学を果たしますが、卒業後は愛知県の瀬戸窯業職業訓練校に入り、この期間に基本的な技能と知識を徹底して学びました。
 地元丹波立杭に戻ってからは日々作品づくりに取り組み、いくつかの公募展に入賞。

 しかし、葛藤の時期を迎えます。

 「約10年間、独自の技法や将来のことでずっと悩んでいました。
 ヒントになることがないかと、考えた形やデザインを手に、先輩たちに意見を求めたりしていました」
 さまざまなアイデアを試みる中で次第に求めていたデザインが見えてきたとか。
 平成9年に行われた第44回日本伝統工芸展にその成果を注ぎ込んだ作品を出品。
 千人以上の応募者の中から見事入選し、陶芸家としての大きな節目になります。
 市野さんの作品は、彩色線象嵌という技法で、はめ込んだ白のきれいな曲線が特徴。落ち着いた色合いで、人柄のままに温かさが伝わってきます。

 毎年全国各地で個展を開催しています。
 個展には100点あまりの作品を展示するため、半年から1年がかりで準備することも。
 大きな作品では1点に1か月を要するものもあるそうです。
 先日の名古屋での個展には多くの市民が足を運んでくれ、感想なども聞く機会があり大成功だったとか。

 陶芸は粘土の調整、成形、乾燥、素焼き、釉かけ、本焼きという工程でつくっていきますが、市野さんは「特に形づくりとデザインに集中力が必要」と話しています。
 素焼き・本焼きにはそれぞれ10時間から13時間かかり、その間、窯のそばにつきっきりという重労働です。
 「大変な作業ですが窯出しのときが一番楽しみで、予想通りでないものや予想以上の出来ばえのものもあり今でもワクワクします」と醍醐味を述べました。
 一方「納得できるのはたいてい1割くらいしかない」と自作については決して妥協がありません。
 時間があれば阪神間で開かれている個展や展覧会などに足を運び、新たなデザインなどを考える参考にしています。

 尊敬する陶芸家はとの質問には「益子焼きを代表する加守田章二氏」と即答。
 「曲線彫文や彩陶など変化に富んだ作品を発表し続け、その作風に惹かれます。
 私も常に新しいものに挑戦し独自の世界を創り出していきたい」と静かな口調の中にも創作への意欲を語ってくれました。
 工房では午前8時から午後7時頃まで作品づくりに没頭。
 
健康と気分転換を兼ねて週に5日ほどは近くの兵庫陶芸美術館までの道など6`から7`も走っています。

 阪神・淡路大震災後に地元の仲間とともに神戸市北区の仮設住宅に被災者を訪れ、丹波焼きの食器をプレゼントしました。
 「報道された被災者の姿を見て、なにかできることはないかと考えて、同じ年代の陶芸家と手分けし御飯茶碗、湯飲み茶碗、お皿をセットにして300セットを持っていきました。その時の皆さんの笑顔にこちらが励まされました」
 後日、喜びと感謝の心がこもった手紙がたくさん届いたそうです。

 また、陶芸に気軽に親しんでもらおうと神戸市北区や垂水区で陶芸教室を開催し、陶芸づくりの楽しさを直接伝えています。
 ふるさと丹波立杭については「周囲4`ぐらいの地域に60軒の窯元がひしめき、1日で見て回れるのが特徴。
 丹波にはおいしいものがたくさんあるので仲間やご家族でぜひ訪ねてきてほしい」と笑顔で答えてくれました。




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up date 2009/10/30

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